【Books】勧めたい10冊(後編)

ジェンダー/セクシュアリティ関係で選んだ10冊の後編。


▼ジョージ・チョーンシー(上杉富之・村上隆則 訳)2006 『同性婚 ゲイの権利をめぐるアメリカ現代史』(明石書店)

2015年に米国で結婚の平等化(同性婚が認められること)が実現した。それまでは州単位で判断されており、賛成派・反対派のせめぎあいがあり、二転三転する州もあった。

今、日本でも結婚の平等化を求めて一斉提訴がおこなわれ、裁判がおこなわれている。そうした動きに対して、なぜ結婚という制度が必要なのか?本人たちが愛し合ってるならそれでいいのではないか、という言葉が投げかけられる。

この本の原題は、Why Marriage? (なぜ、結婚?)だ。同じ疑問が米国でも向けられてきた。この本には、結婚を求めていく背景が書かれており、そこには米国固有の社会状況の変化があるが、本質的には日本も同じである。


▼伏見憲明 2002 『ゲイという[経験]』(ポット出版)

著者のデビュー作であり、ゲイスタディーズの嚆矢でもある『プライベート・ゲイ・ライフ』(1991)や、『キャンピー感覚』(1995)などが再録されており、ゲイ雑誌『バディ』に連載していた「ゲイの考古学」、「伏見ゲイ新聞」も収められている。「ゲイの考古学」は、著者の最新刊となる『新宿二丁目』(2019)の土台となった。「伏見ゲイ新聞」は、当時の日本のゲイムーブメントの記録ともなっている。

『プライベート・ゲイ・ライフ』は、著者のオリジナリティー溢れるジェンダー/セクシュアリティ論。その後、アカデミックなジェンダー/セクシュアリティ論に関係する分野では、新しい理論も登場したが、それらを踏まえて、また読み直されるべきだと思う。


▼田亀源五郎 2015〜7『弟の夫』全4巻(双葉社)

全3巻で一冊扱いということで…。田亀は、世界的にも広く名が知られ、各地に熱烈なファンを持つ「ゲイ・エロティック・アーティスト」である。その彼が「一般誌」である『月刊アクション』に連載した作品。

私は、この単行本を手に取り開いた瞬間から目頭が熱くなり、何度も涙を流しながら読んだ。主人公、弥一の元へ、カナダで亡くなった弟(涼二)の夫(マイク)が訪れる。弥一は、妻と離婚し、娘、夏菜と二人暮らし。

その家に滞在することになったマイクと、弥一、夏菜と、そして周りの人たちとの出会いと関係の変化、日本における同性愛に対する様々な視線、が描かれている。NHKでドラマ化された。国内外で数々の賞を受賞。


▼ 上川あや 2007 『変えていく勇気 :「性同一性障害」の私から」(岩波新書)

2003年4月、「性同一性障害」であることを公にして世田谷区議会議員選挙に出馬。日本で初めて、性的マイノリティをオープンにして当選した議員となった。その著者のライフヒストリーが記されている。社会を変えていく彼女の思いと姿勢には力づけられる。

彼女の当選した翌年に成立した「性同一性障害者特例法」の動きについての記述もとても興味深く、制度を動かすために必要なことを教えてくれる。


▼井田真木子 1997 『もうひとつの青春 同性愛者たち』(文春文庫)

同性愛者である二十代の若者7人を追ったルポルタージュ。彼らは、ゲイ/レズビアンの人権運動団体アカーのメンバー。同性愛者として初めて闘われた裁判と言われる「府中青年の家裁判」を闘い、勝利を勝ち取った。その時代は、AIDSとの闘いが深刻なときでもあった。

その裁判やAIDSとの闘いを軸にしながら、それぞれの若者のそれまでの人生が描かれている。今や、その時代の運動の様子の貴重な記録ともなっている。

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GrassRoots Actions for Diversity オープンリーゲイの文化人類学者 砂川秀樹