ファシズムへの志向を持つ私

SF作家の眉村卓さんが亡くなられたという。小学高学年〜中学時代にかけて、彼の作品を夢中で読んだ記憶がある。彼の作品を原作としたNHKドラマにも夢中だった。その彼の作品について、以前のブログに2015年2月15日に書いた記事があったので、再録。


▼「未来からの挑戦」

NHKアーカイブズで、少年ドラマシリーズ「未来からの挑戦」(1977年)を取り上げられていた。僕が小学生時代に最も夢中になったドラマだ。今でもその主題歌を歌うことができる。

少年ドラマシリーズは全体的に人気が高かったようだが、特にこのドラマは、今も強い愛着を持っている人が多いらしい。NHKには、VTRは一部しか残っていなかったものの、視聴者が保存していたVTRをもとに復刻され、復刻記念の上映会もおこなわれたとか。

このドラマは、「眉村卓の『ねらわれた学園』『地獄の才能』を原作にしたSF作品で、受験名門中学校を舞台に、学校を支配し、人類社会を改革しようとする未来人と、その企みを阻止しようとする中学生の姿を描いた」もの(「」内はNHKのサイトより引用)。

▼「ファッショ」

アーカイブズで放送されていた回は、支配が進んで行くところだった。

未来人が背後で糸を引く中、学校支配が始まる。超能力を持つ生徒会長の下、校則違反やいたずらを摘発するための校内パトロールがおこなわれ、違反者は処罰されるようになる。「それは行き過ぎ」という教師も、超能力の力により屈せられる。それに抵抗する主人公は、家でその話を父親にするのだが、父親は、自分たちが経験した「気づいたら身動きがとれなくなる」と、「ファッショ」について語る。

「ファッショ」という言葉がその中使われていたことを全く覚えていなかったが、そのようなシーンを見ながら、当時このドラマに夢中になっていた感覚を思い出していた。


▼二つの志向

私がこのドラマが好きだったのは、当時、超能力にとても関心があったことが大きいと思う(超能力や超常現象が人気が高かった時代背景もあり)。しかし、今振り返ると、超越的な力を持つ者やエリートによる支配と、それに疑問を持つ主人公の戦い、という物語構造に惹かれていたのだなと気づく。

そして、その感覚を思い出す時、はっとするのは、僕は、抵抗する主人公に強く共感していたものの、エリートによる支配とそれによる秩序形成にも魅了されていたということだ。僕の中には、明らかに矛盾した二つの志向があった。この時の自分について考えることは、今のファシズム志向を考えるうえで重要な気がする。


▼ファシズムに魅了される人々

ファシズムに魅了される人は、当然ながら、自分を支配する側としてイメージし、自分の価値観で支配できると妄想する。しかし、誰しも程度の差こそあれ、どこかに支配的価値観にそぐわない部分を持つ。あるいは、全般的には支配的価値観に合致してても、自分の変化により、逸脱する時があったり、支配者側でなくなる時が来たりする。そうでなくとも、常に支配的な価値観の中で生きなければならないという状況は、息苦しくなるものだ。

今、ファシズム志向の人が、そこに向けて動くことに生き生きしていることができるとするならば、それは、そうではない世界がまだ広がっていて、その中でやっているからであって、本当にファシズムが強大になったときには、多くの人は自分も息苦しいことに気づくだろう。

ただ、一つ厄介なのは、ファシズムの表象は、人々を熱狂させる力を持つということだ。このドラマでは、SFらしく超能力がその役割を果たしているが、学校を支配する生徒会長(女生徒)が教師に向けても発するきっぱりとした物言いや態度、その背後にいるという設定の未来人である男生徒のクールで陰のあるキャラクターが、見ている人を惹きつける(男生徒の方は、結局、主人公側に立ち支配体制を壊す役割を果たすのだが)。


▼自分にも残る志向

そして、自分を振り返るとき、今は意識的に持つことはないけれど、子どもの頃に感じていたエリート支配と秩序形成への志向は、自分の奥底に潜んでいるということを、38年ぶりにこのドラマを観て気づいた。そのことを警戒感を持って覚えておきたい。

その上で、今後考えていきたいのは、両方に惹かれる自分があったとして、どちらに傾くかというのはどこで分かれるのだろうか、ということ。僕の場合、ゲイであることを意識し始めたことが大きい気がするが、ゲイの中でもファシズム志向の人が少なくないことを考えると、それだけじゃないだろう。

分かれていく理由は複雑だろうが、自分もそちらに行く可能性があった/あるということを考えながら、社会がファシズムへ流れていく中、自分がやるべきことは何かを考え、実践していきたいと改めて思う。

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GrassRoots Actions for Diversity オープンリーゲイの文化人類学者 砂川秀樹